無機固体の物性をスピンとダイポールの観点から考え、新しい機能(特に、光機能)をもつ無機材料を探索します。

 最近の無機固体や無機材料の科学と工学の進歩には目を見張るものがあります。この20年ほどをみても、準結晶の発見、高温超伝導体の発見、室温巨大磁気抵抗の発見、青色レーザーダイオードの発明など、エポックメーキングな話題が数多くあります。

 当研究室では、このような趨勢を十分に認識して、機能性無機材料への応用を考慮しながら無機固体化学の基礎を研究することを目的としています。すなわち、新しい無機固体物質の物性の理解と合成方法の考案が研究対象であり、特に、スピンエレクトロニクス、磁気光学、非線形光学といった分野で応用が可能な無機固体の探索を行います。



スピンFET(電界効果トランジスタ)の模式図;キャリアのスピン状態をゲート電圧で操作することで、電流を制御する。

1.酸化物磁性体とスピンエレクトロニクスおよび磁気光学

 これまでのエレクトロニクスでは電子と正孔の電荷のみに着目して種々のデバイスがつくられてきたが、最近、電子のスピンの性質を積極的に利用するトランジスタや磁気メモリが考案されている。この分野はスピンエレクトロニクスとよばれ、世界的な規模で活発な研究が始まっている。また、磁性体に光が入射すると、偏光面が回転するなど光はさまざまな変調を受ける。この分野は磁気光学とよばれる。平たく言えば、「透明な磁石」を用いれば光信号の制御を可能にする材料が開発できる。当研究室では、エネルギーギャップが広く可視光に対して透過率の高い酸化物を対象に、それらの基礎的な磁気的性質を明らかにすると同時に、スピンエレクトロニクスや磁気光学の分野で有効な材料を探索する。特に、まだ実現されていない酸化物磁性半導体のpn接合とデバイス化の達成、および有力な候補の現れていない短波長ファラデー素子の提案を行う。

研究の詳細

2.非晶質構造とスピン・ダイポール
 
 非晶質無機固体は、構成イオン間の結合距離・角度に分布を有する不規則構造をもつ。固体中の不規則なイオン配列が磁気モーメントや電気双極子モーメントの空間的な分布に強い影響を与えるため、規則構造からなる結晶とは異なる特異な磁気的・誘電的性質が現れる。一例は非晶質酸化物磁性体に見られるスピングラス的な挙動である。一方で、外部からの刺激により、非晶質構造中の不規則なイオン配列の場に秩序構造を誘起できる。たとえば、強い電場により系内にイオン分極の規則的な配列あるいは周期構造を作製できる。その結果、構造の反転対称性に深く係わる2次非線形光学効果が観察される。当研究室では、酸化物を中心とした非晶質固体を対象に、磁気モーメントおよび電気双極子モーメントの空間的な分布と磁気的性質および2次非線形光学効果との係わりあいを調べ、有用な材料設計の指針を得ることを目指す。

レーザーアブレーション法(上)によりサファイア基板上にエピタキシャル成長させた磁性半導体(FeTiO3―Fe2O3固溶体)(下)。

研究の詳細

3.ランダム系無機固体の光物性

 
無機固体の微粒子が無秩序に充填した系に代表されるような、光の波長程度の領域(~数百ナノメートル)に大きな屈折率差を有する系に入射した光は多重散乱を受け、極限的には媒質内の微小空間に閉じ込められる。この効果を利用することで、光増幅・光記録効果など、様々な興味深い現象が起こる。当研究室では光と強く相互作用するランダムフォトニック構造の作製を目指し、新規な作製法の開発および光物性の特異性や機能性の評価をおこなう。

研究の詳細

非晶質固体(20Fe2O3·80TeO2)の磁化率の温度依存性;磁気モーメントの配向状態が冷却過程に依存する。


2次非線形光学効果による光の周波数変換

ランダムフォトニック構造による光の閉じ込め

4.プラズモニクスの材料科学

 
金属表面の自由電子の協同的振動(プラズモン)を利用したフォトニクスの一分野として始まったプラズモニクスは、現在ではフォトニクスの弱点を補い限界を超える技術として注目を集めている。応用分野は通信、情報処理、医療、デバイスとしてはセンサー、ナノ光源から最近では太陽電池など幅広い。本研究室では金や銀に替わる新たなプラズモニック材料の開発や金属-誘電体複合材料を用いた新たなプラズモニック-フォトニックモードの利用に向けた研究を進めている。



研究の詳細