●局在表面プラズモンとは

 局在表面プラズモン共鳴現象について簡単に説明したい。金属の伝導電子は特定の陽イオンに束縛されていないので,外部電場に応答して金属中を自由に動くことができる。これが金属の高い電気伝導の理由である。電磁波に対してもプラズマ周波数以下の周波数であれば電子は交流電場に追随可能であり,これが金属の遮蔽効果を生む。ここで,可視域の光が波長程度あるいはそれ以下の大きさの金属微粒子に照射される場合を考えてみる。この場合,伝導電子はどこまでも動けるわけではなく,光電場による静電引力の他に全体の正電荷(陽イオン)と負電荷(伝導電子雲)の中心のずれによって生じる静電引力を拘束力として受けることになる。この拘束力は変位距離に比例するため,陽イオンと電子雲を結ぶバネのように働く。バネには固有振動数があり,特定の周波数を持つ外場に対して共鳴を起こす。これが局在表面プラズモン共鳴である。金や銀の微粒子はこの固有振動を可視域に持つため,呈色する。
  共鳴周波数に等しい周波数を持つ電磁波を照射することで,電磁波が金属粒子上の伝導電子の振動へと変換される。これは,電磁波のエネルギーが微小領域に集中することを意味する。回折限界以下にエネルギーを集中させることが可能となるため,これを用いたナノ分光法や超小型情報処理回路などが活発に研究されている。また,周囲の屈折率に対して鋭敏に共鳴波長がシフトすることを利用したセンサーへの応用研究も盛んである。






弱点克服のために①-導電性酸化物プラズモニック材料

弱点克服のために②-フォトニック-プラズモニック結合モード







 金や銀の光損失の原因はプラズモン振動の摩擦、および可視域にあるバンド間遷移である。プラズモン振動の摩擦を軽減するためには、伝導電子の散乱を減少させることが有効であるため、格子欠陥の少ない単結晶金属を用いる研究がなされている。これに対し、バンド間遷移は金属の電子構造に起因する本質的な過程であるので低減させることは難しい。そこで金や銀の替わりに導電性金属酸化物をプラズモニック材料として用いることが提案されている。我々は代表的な導電性金属酸化物であるITO薄膜を作製し、表面プラズモンを励起することに成功した。ホール効果測定により輸送特性を評価し、ドルーデモデルを使ってITO薄膜の誘電率を算出したところ、薄膜の光損失を表す誘電率の虚部は金や銀に比べ桁違いに小さいことがわかった。

(↑)Fig.3 スラブ導波路と金属ナノ粒子アレイを組み合わせた
試料の模式図。

(→)Fig.4 2次元シミュレーションによる磁場強度分布。
(上)金属ナノ粒子アレイとスラブ導波路に励起された結合モード(下)表面プラズモン単独モード。





●局在表面プラズモンの弱点-光損失

 





光と金属の相互作用が非常に強いことは、光を強力に変調できることを意味するが、同時に光損失(光吸収)も多いことを意味する。これがフォトニクス応用へのおおきな障害となっている。損失はたとえば通信においては通信距離、センサーにおいては感度、太陽電池においては光電変換効率に深刻な影響を及ぼす。実際、多くのプラズモニクス材料が高い特性を持ちながらも実用化に届かない一因がこの損失である。

Fig.2 ITO薄膜の誘電率。比較のために
金と銀の誘電率もプロットした。

Fig.1 ITOステップテラス薄膜のAFM像

 表面プラズモンのエネルギー集中効果を利用しつつ金属の光損失を避けるためには、金属から離れた場所にエネルギーを集中させればよい。通常、表面プラズモンは界面に局在する波であるので、界面から引き離すのは無理である。しかし、表面プラズモンを導波路や表面波など他の光学モードと組み合わせることで、これが可能となる可能性がある。我々は、スラブ導波路と金属ナノ粒子アレイを組み合わせることで、局在表面プラズモンと導波路モードが結合する結果、金属ナノ粒子から導波路内部まで大きく広がったモードが励起可能であることを見出した。この結合モードは局在表面プラズモン単独よりも非常に高いエネルギー密度を有するため、さまざまな光学過程を増強するのに有効であると考えられる。